幼児期の愛情欠乏からおこるのが愛着障害です。愛着障害は、「保護、愛情への希求を無視されたことに対する反応としての社会的関係性の障害」と定義されています。幼児期の育児環境に由来するもので、両親からの愛情を十分に受けられなかった子供に発生します。夫婦の不仲や母子家庭あるいは父子家庭などで、子供への愛情不足が原因となって、愛情関係を形成する自我が育たないのです。両親の一方が、強迫性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害の場合も、非共感的な接し方を子供にするため子供は愛着障害になりがちです。
目次
脱抑制型と抑制型の違い
愛着障害には、その発現の仕方にいくつかの分類があります。たとえあ、「脱抑制型愛着障害」というのは、過度に広範な人間関係を形成しようとするものです。つまり誰かれなく人と絆を形成しようとするものです。愛情不足からくるもので、幼児期のトラウマを癒す必要があります。誰にでも心を開いて全力でぶつかっていくように一見見えますが、その心の中には、愛着障害の闇を抱えているのです。これと対称的なものが、「抑制型愛着障害」です。こちらは、前者とは異なり、常にびくびくしていて、不安な状態になり、対人関係で恐ろしい出来事が起こる恐怖心を抱いています。その結果として不登校や引きこもり、孤独などに陥りやすいのです。現在の引きこもり増加には、「抑制型愛着障害」の増加も関与していると考えられています。
情緒不安定になりがちな愛着障害
愛着障害のある人は、ひどく攻撃的になったり、感情が抑えられなくなったり、すぐ気が散ったり、欲求不満をすぐ爆発させたりします。幼児期には、ADD(注意欠陥障害)や言語障害や自閉症と間違われることもあります。愛着障害の子供は虐待、育児放棄、愛情不足、身体的・性的虐待のある家庭で育てられています。施設で育てられた場合にも現れます。子供時代に、環境を変えることができて、愛情に満ちた養育や保護のある健全な環境におくことで、愛着障害の症状は治ります。愛着障害の児童は、愛に恵まれた環境で世話や養育を受けた時、改善されるのです。そういった癒しが得られなかった場合、大人になってからADHDに似た症状が目立つようになることも最近になって、わかってきています。大人のADHDとされる人々を詳しく調べていると、症状の悪化が大人になってから出てきている事例があることが判明してきたのです。それらのケースのほとんどが、幼児期の環境が悪く、愛着障害を抱えている人々だったのです。
愛着障害から二次的にパーソナリティ障害や気分障害に
愛着障害を癒す環境を得ることができなかった場合や、自己治癒できないまま、改善しないまま成長して成人になったとき、愛着障害を抱えた人には大きな問題が生じます。不毛な恋愛やトラブルの多い対人関係で苦労ばかり続けることになります。その場合は、潜在意識の内部に生きている幼い自分の意識にアプローチしなければなりません。この内的な自我をインナーチャイルドともいいます。インナーチャイルドは、ヒプノセラピーの手法で癒すことが可能です。潜在意識に直接働きかけて、傷ついた自我意識を癒し本来の状態に戻すのです。発達障害の子供が、愛着障害になると症状は悪化します。もし、子供が発達障害の傾向があるとわかったら、愛着障害を予防する工夫が重要となるのです。愛着障害は、「保護、愛情」への希求を無視されたことに対する反応としての社会的関係性の障害ですから、癒すには、「保護、愛情」を与える必要があります。
オキシトシンと愛着障害、パーソナリティ障害、発達障害
アスペルガーや、ADHDの不注意や多動性は、東大医学部の研究によれば、オキシトシンの投与が効果があったそうです。オキシトシンの点鼻薬は海外では実用化され個人輸入や自費診療の場で入手することができるようです。オキシトシン投与は、愛着障害によるオキシトシン欠乏あるいはオキシトシン受容体減少などの身体的変化を人為的に改善させる可能性が指摘されています。もっと普及すれば、苦しみから救われる人が増える可能性があります。同じ原因に由来しているため、パーソナリティ障害の人にも有益と思われます。オキシトシンを活用する臨床研究がさらに進めば、もしかすると引きこもりを起こしている回避性パーソナリティ障害あるいは回避性愛着障害の人が、社会復帰をしていく際の助けになる可能性があります。日本国内には、引きこもり、準引きこもりをあわせると数百万人いるとも言われており、これらの人々が心身の苦悩から救われて社会復帰できるのであれば、オキシトシン医療はもっと広く活用されるべきかと思います。まだまだ研究者が少ないので、日本国内の大学など研究機関がもっとオキシトシンに目をつけてもらえることを祈るばかりです。