愛着障害とは、幼少期の両親、母親との愛情関係が健全に育まれなかったために、自我の成長において、障害をきたしたものです。これがさまざまなパーソナリティ障害の遠因になっていると考えられています。また、発達障害の症状の出現にも一定の影響があることも指摘されています。愛着障害を癒すことはパーソナリティ障害を緩和することにつながっていきます。
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愛着障害がパーソナリティ障害につながっていく
愛着障害の病態を最初に指摘したのは小児精神医学のJ・ボウルビイ医師でした。乳幼児の時期、生後六ヶ月から1歳半ぐらいまでの臨界期と呼ばれる時期には母親という特定の存在による絶対的な安心、安全、そして愛情が保障されなければ、愛着障害の子供が育つのです。愛着障害は、その子供の成長後にパーソナリティ障害をおこしたり、発達障害を悪化させる原因になることもあります。そして、恋愛関係などの人間関係に支障をきたすようになります。愛着障害のある人は、対人関係を良好に維持できないのです。今、恋愛依存症とよばれているものの実態は、境界性パーソナリティ障害あるいは愛着障害のことなのです。
発達障害・愛着障害 現場で正しくこどもを理解し、こどもに合った支援をする 『「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム』
精神医学の分野では、恋愛依存症とは呼びません。これは一部の恋愛カウンセラーが広めた言葉です。したがって、恋愛依存症について知りたい人は、まず書籍を熟読され、愛着障害について学ぶことが先決です。本書はさまざまな愛着障害のタイプと、その克服への方法論をわかりやすく学ぶことができます。恋愛や人間関係に悩んでいる人にとっても役立つ書物です。
オキシトシンと愛着障害
発達障害については自閉症スペクトラムと呼称が変わるなど医療界も混乱しています。従来のアスペルガー症候群やADHDなどの呼称がすぐに消えるわけではないと思いますが、診断基準がころころ変わるのは困りものです。それもこれも、この疾患自体が、人間によるカテゴリーわけの産物であり、本来、病気だと定める必要のない人まで病気にされてしまうようなところもあるのです。そこで、親としては、障害というふうに受け止めず、個性として受け止めたいところです。わが子の個性を伸ばすような気持ちで育てるほうがいい結果を出せるのです。発達障害とオキシトシンというホルモンには深い関係があるようです。発達障害を改善させる研究はさまざまになされていますが、最近、米医師会雑誌に発表された東大医学部の研究によれば、オキシトシンの投与が効果があったそうです。
対人関係に信頼感を生むオキシトシン
オキシトシンはもともと子宮の収縮や乳汁の分泌を促す働きがあるというホルモンですが、対人関係における相手への信頼感を生み出し、コミュニケーション能力を高めることが判明してきています。幼児期に母親の抱擁、ハグ、言葉かけなどで、オキシトシンの分泌が促進されるのです。母親の愛護的で共感的な接触が子供の脳内ホルモンにも影響を与えているのです。オキシトシンの分泌の低下が愛着障害と関連していて、それがパーソナリティ障害の発症にも関連しているということです。そして、発達障害の症状の緩和においても重要なホルモンでもあるということです。そこで、東大医学部の研究では、オキシトシン点鼻薬を発達障害の患者に投与したようですが、患者のコミュニケーション関連能力の改善が認められたと報告しています。オキシトシンの増加は、対人関係構築の能力に関与しているとうことなのです。薬剤の投与によらずとも、オキシトシン分泌を増やす方法はあるのでしょうか。それはあります。
オキシトシンの増加は対人関係構築の能力に関与
コミュニケーショントレーニングをすることで、結果的にオキシトシン分泌は促進されていくのです。発達障害の子供にコミュニケーショントレーニングをすることで、対人関係構築の能力が改善することが、これまでの研究でもあきらかになっています。そして、パーソナリティ障害に関しても、オキシトシン分泌は重要です。特に境界性パーソナリティ障害においては、愛着障害との関連が強いのです。発達障害の傾向がある子供にどんな言葉をかけると効果的に育てられるのか。その決まりのフレーズがあるのをご存知でしょうか。決まりのフレーズを多種類、覚えて、さっそくわが子に使ったところ、反応が違ってきたとの話もきいています。脳機能と発達障害の特性から導き出された法則にもとづく、言葉のかけ方、このフレーズを使えば、子供はこう反応する、という仕組みがあるのです。すばらしいところは、このノウハウはすべての子供に有効で、健常な子供であればあるほど、さらに効果発揮が大きくなるということです。ある意味、子育てに使える魔法のフレーズなのです。これはパーソナリティ障害の改善にもそのまま応用できるものといえます。