日本人に必要なアドラー心理学とパーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害など、多くのパーソナリティ障害の傾向の人にとって、有益な心理学が、アドラー心理学です。アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラーが創始した心理学であり、同時代に活躍したユングヤフロイトと並び称される存在です。

目次

パーソナリティの未熟さを補い人格を育てるアドラー心理学

アドラー心理学の特徴は、過去の原因を追究することではなく、人生の目的に焦点をあてて人生にとりくむことにあります。ユングやフロイトの心理学では、幼児期の出来事に原因を求めたりして心身の問題にアプローチします。これに対してアドラーは、原因を追究しても、今の現実を変えることにつながらないと述べ、それよりも大事なのは、目的について考えることであるとしました。人間はすべてなんらかの目的をもって生きているということであり、自覚しているか否かは別にして、目的を持たない行動は存在しないと主張しています。たとえば引きこもるのは、引きこもることで得られるメリットを目的としているからと解釈するのです。そして、この目的の部分を調整していくことで、行動も変容するとして、一種の人生哲学を提唱したのがアドラーであるといえるでしょう。この考え方は、パーソナリティ障害の傾向があって人生に苦悩している人にとって、良き処方箋となるものです。アドラーの教えは、現代のあらゆる人にとって、社会生活を快適にするためのツールとなるのです。

課題の分離ができると対人関係が好転する

アドラーは、人生における苦悩とは、人間関係の苦悩であると述べています。そして、人間関係の苦悩を解決するためには、課題の分離が必要だと説いています。課題の分離とは、自分の課題と、他者の課題を分けて考えることであり、多くの苦しみは、課題の分離ができないために生じているとしました。課題の分離がもっともできないパーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害でしょう。他者と自分との境界があいまいになり、他者の課題を自分の課題と誤認して、他者にかかわることでトラブルを起こします。強迫性パーソナリティ障害も、自他の境界線が引けず、自分のルールを他者に押し付けようとする傾向があります。依存性パーソナリティ障害も、自分の軸を見失い、他者に影響されてしまうところがあります。これらのパーソナリティ障害は、課題の分離を理解することで、問題行動が減らせるといえるでしょう。日本人は昔から、同調圧力が強い民族であるといわれてきました。これは日本民族の美点にもなりますが、一方で、課題の分離が上手くできず、周囲に流されてしまう傾向も生み出しているかもしれません。アドラー心理学を学ぶことで、こうした欠点が克服できる利点があります。

人生の主人公、共同体への奉仕

アドラーは誰でも自分の人生の主人公であると説きました。人生に自分という軸を持ち、自分の自由な意志を発揮して生きることの大切さを説いたといえます。そのために、課題の分離を正しく理解する必要があるということです。それと同時に、人が幸せになるためには、「共同体への奉仕」に生きがいを見出すことが必要であるとも説いています。共同体とは、夫婦、家族、職場、地域、国家などの人の集合体のことを指します。アドラーは共同体への奉仕の中に自己の存在価値を見出すことで人は幸福感を感じることができるのだと説いています。自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害の人は、自分本位に行きて、周囲を利用することばかり考える傾向がありますが、彼らがもし、共同体への奉仕という視点を持つことができるようになれば、人間関係の葛藤を減らして、周囲と調和しやすくなることができるかもしれません。パーソナリティ障害を克服していくうえで、アドラー心理学を学ぶことは有益であるということがわかると思います。アドラー心理学を会得することで、自然に愛着障害も治癒し、歪んでいたパーソナリティスタイルが、バランスを回復し、社会生活を快適に過ごせるように思考と感情が改善していく可能性があります。アドラー心理学に関する書籍は多数、出版されており、中には非常にわかりやすいコミックを交えた解説書も出ています。
コミックでわかるアドラー心理学

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