強迫性パーソナリティ障害を治す方法

強迫性パーソナリティ障害とは、責任感や義務感が強く、自分のルールや価値観にとらわれて、それを周囲にも強要したり、周囲と葛藤が生じたりします。自分のルールや価値観を柔軟に緩めたり、状況に応じて変更したりといった自在な対応が苦手です。このような性格の傾向を持つ人がすべて、強迫性パーソナリティ障害というわけではありません。傾向の程度が障害というほどのレベルではない人も多く、このような場合には、強迫性パーソナリティスタイルあるいは強迫性パーソナリティと呼び、障害とは区別されます。

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特定の対象への強い執着が特徴

強迫性パーソナリティ障害は、執着気質と呼ばれていた性格傾向に重なる特徴をもっています。特定の行動規範や考え方への執着が強い性格傾向のことを、下田光造は「執着気質」と分類しました。仕事熱心で凝り性、几帳面で強い正義感を持つという特徴があり、ごまかすなどの融通がきかないという性格です。そのため、精神へのストレスが大きくかかり、メンタルの不調を招きやすいのです。下田光造は、執着気質は躁うつ病の病前性格であると主張しました。強迫性パーソナリティ障害は「~すべき」との観念や規範にとらわれ、周囲との摩擦を生じ、苦しみます。もし、自分の性格の特性を自覚して、それとうまく付き合って、特性を長所として生かすことと同時に、その特性が短所として問題を生じることを可能な限り縮小していく、生き方の工夫を習得していけば、しだいに生きやすくなっていくのです。自分の生き方を振り返り、物事の受け取り方や解釈を改善していく地道な努力を重ねていくことが大切です。そのためには認知行動療法などのカウンセリングも有益です。強迫性パーソナリティ障害に限らず、さまざまなパーソナリティ障害や、発達障害や境界認知も、診断基準を満たすまでのレベルではない「グレーゾーン」が存在します。「グレーゾーン」について、精神科医の岡田尊司氏が非常にわかりやすい名著を出版されました。こちらです。


発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法

言語理解が高い人がこだわりを持ちやすい

この本によると、こだわりの強さを推し量るのに、発達検査で調べる「言語理解」と「知覚統合」の比率が参考になるということです。詳しくは同書をぜひお読みください。本書の中では、パーソナリティのほか、発達障害のグレーゾーンのケース、境界認知のケースなどをとりあげて、その克服法について解説されているので、生きづらさを抱えている人にとって助けになる内容です。こだわりといってもいろいろな形がありますが、固着についても知っておく必要があります。固着は心地よい体験によっても作り出されますが、恐怖や不安によっても生まれます。そして、幼い発達段階への固着です。ある発達段階つまり幼少期に満たされなかった欲求不満が成長後も固着として残るものです。過剰な承認欲求も、自己顕示欲も、その多くは幼少期に満たされなかった欲求への固着から生まれているとのことです。

幼い頃に満たされなかった欲求への固着

幼いころに満たされなかったことへの固着の場合も、なんらかの恐怖や嫌悪のトラウマへの固着の場合も、そこに共通しているのは、過去への執着です。過去を引きずることで人間は前に進めなくなり、性格に歪みを生じていくということです。岡田尊司氏は、本書の中で、同じことを繰り返す傾向や物事の細部への執着のことを、「同一性へのこだわり」と呼び、一方、過去の欲求不満や愛情不足や心の傷への執着のことを、「外傷性のこだわり」と呼んで、大別することを推奨しておられます。「同一性へのこだわり」のほうは、遺伝的要因や脳への障害などの生物学的な要因の関与が原因となり、「外傷性のこだわり」のほうは、心理的、社会的な要因の関与が原因となると述べられています。心当たりのある方はぜひ本書を読まれ、自分を知ることでその対策を学び、生きづらさを解消して頂ければと思います。岡田尊司氏はこれまで、パーソナリティ障害や発達障害そして愛着障害に関する素晴らしい著書を多数執筆しておられますが、本書はその中でも隋逸の名著であると思います。ぜひとも多くの人に読んでいただきたい一冊です。

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