うつ病をはじめとする気分障害などの精神疾患やパーソナリティ障害の背景にある病態として注目されているのが愛着障害という病態です。これは、親などの身近な存在とのあいだに愛着形成を健全に行えず、愛情欠乏状態が生じた結果、外界との反応の様式が歪んで、ストレスとなり、メンタルの不調を生み出しているという観察から注目されるようになりました。
愛着障害とは、精神疾患ではないため、治療というよりも克服と呼ぶのが適切です。愛着障害をうまく克服することで、うつ病が治ったり、パーソナリティ障害が治ったり、さまざまな心の悩みから解放されることがわかってきています。
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愛着障害を克服するとパーソナリティ障害が癒える
両親や保護者とのかかわりのストレスからさまざまな問題が起こる場合、かつては機能不全家族と表現したり、アダルトチルドレンと表現したり、さまざまな切り口から分析が試みられてきました。愛着障害という状態にすべての根源的な問題があることを指摘し続けている、精神科医が、岡田尊司さんです。本書「愛着障害の克服」では、愛着障害の克服という困難な課題に取り組む方策が開示されています。
愛着障害の克服~「愛着アプローチ」で、人は変われる~ (光文社新書)
症状を治すのではない。愛着モデル、愛着を改善するという理論
愛着アプローチとは、愛着を改善するための取り組みであり、安定化させる、修復する、という二つのアプローチがあります。愛着障害の克服の鍵は、心の安全基地となる存在が持てるかどうかにあります。本来、心の安全基地とは幼児にとっては母親にほかなりません。あるいは父親の場合もありますが、本来は親の役目なのです。その親が、幼児に対して、健全な愛着形成をすることができないために、さまざまな精神疾患を将来的に生み出す愛着障害を作り出しているのです。愛着障害を克服するには親あるいは医師やカウンセラーあるいは配偶者など、身近な人間が、心の安全基地を提供する必要があるのです。
愛着障害の克服、愛着タイプに応じたアプローチ
愛着タイプは大きく三つに大別され、それは不安型、回避型、未解決型と本書では分類されています。不安型とは、とらわれ型とも言い、否定や批判への過剰反応、自己を過剰防衛する反応が特徴です。共感してもらうことで癒されていく依存的な特性があります。回避型は、問題に向き合わず、人と向き合わず、心に壁を作っています。時間をかけてかかわり、甘えることを知らないいびつな自己愛を癒します。未解決型は、過去の親子の問題などをトラウマとして抱え込んでいます。未解決型にはさらに、とらわれ型と回避型のサブタイプがあります。こうした大まかな分類はありますが、心の安全基地を与えて、愛着の未完成な部分をあらためて育てていくことが愛着障害の克服であり、それが、パーソナリティ障害を克服していくことにつながっていることが理解できます。パーソナリティ障害で悩んでいる人にとって必読書といえるでしょう。