パーソナリティ障害と仕事について

パーソナリティ障害を抱える人から、こんな相談を受けることがあります。「採用されたとしても、うまく働く自信がありません。面接に行って不採用だったら、私はホッとするのです。働くことに逃げ腰なんですが、どうしたら良いでしょうか。うまく仕事をこなせなくて、また怒られたり、仕事できないねと言われることが頭に浮かんで憂鬱です。私にとって働くとはつらくて悲しいものと思えてしまうのです。」

【回答】

目次

自分の得意な分野を仕事にすることがもっとも大切

仕事への不安は、回避性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害で顕著です。回避性の要素があると、困難なことからできるだけ逃げようとします。失敗を極度に恐れるため、新しいチャレンジをすることができません。しかし、これでは幸せになることもできないし、成長する機会がいつまでたってもめぐってきません。考え方を変えていく必要があります。ところで、誰でも、自分にとって得意な分野があります。家事や掃除が得意であったり、絵や図がうまく描けたり、演奏ができたり、接客が得意であったり、人の話を上手に聞けたり、何かを上手に説明できたり、人にはそれぞれ得意分野があります。社会において、それぞれの人間が自分の得意分野で貢献すれば、それがお互いの助けあいになります。それが働くことの意味です。まず、自分の得意分野、適性を最初に考えることです。

パーソナリティ障害があっても得意分野は活かせる

世の中に、まったくの無能の人というのはありえません。過去を振り返れば、自分の適性、得意なことが何かあります。それを仕事にすることを考えてみましょう。そういう分野を探して、応募することが社会貢献です。そして、いったん働き出したら、松尾芭蕉の言った「われ、無芸無能にしてこの道に通ず」という言葉を忘れないことです。無芸無能つまり、ほかに何も能力も才能もないけれど、この道を信じて、ひたすら進んでいくとやがて、できないこともできるようになったという成長の仕方です。つまり、怒られても、叱られても、注意されても、それを乗り越えて、成長していく心の強さを持つことがメンタルの病気を克服するための鍵になります。それがない貧弱な心である限り、心が成熟した大人となりえません。心が成熟すれば、誹謗中傷も自分の糧として成長できるのです。

低すぎる自己価値を高めるカウンセリング

ちょっと注意されたり非難されるとすぐにへこむのは、プライドが高すぎたり、逆にセルフイメージが低すぎる人にみられます。自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害があると、この傾向が特に顕著に出てきます。自己愛性パーソナリティ障害では、プライドが高すぎて人に否定されたくないのです。その傲慢な心を捨てて、謙虚に学ぶ人になるように、自分を育てなおす作業が大切です。境界性パーソナリティ障害では、セルフイメージが低すぎて、すぐに精神的に突き落とされたように感じます。注意されたら、そこから謙虚に学ぶ人であれば、へこんでいるヒマはありません。その謙虚な向上心がもてるかどうかです。それを学ぶのが仕事です。仕事とは学びです。仕事をしないで、メンタルが成長することはありえません。最初はカウンセリングを受けながら仕事をすることをおすすめします。

支えてもらいながら脆弱な自我を成長させ克服する

パーソナリティ障害だから仕事ができないと考えるのではなく、パーソナリティ障害を改善したり克服したりして幸せになるために仕事を活用する視点が大切です。潜在意識の働きから説明するなら、自分自身を適材適所に配置すれば、世のため人のために徳が積めるので、その徳分により、幸運が引き寄せられるので、幸せや喜びが授かるのです。自分が幸せになるためには、まず、誰かを幸せにしなければなりません。それが、仕事であったり、育児や子育てであるのです。なんらかの形で、世のため人のためにつくすことで、誰かの幸せに貢献しているのです。それが幸せとなり、自分に戻ってくるのです。これを実践していくうちにパーソナリティ障害も緩和され、人格の成熟が進んでいきます。ついには、ほとんどパーソナリティ障害が目立たなくなるところまで成長できるのです。

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