パーソナリティ障害とパーソナリティスタイル

パーソナリティ障害を抱えて苦しんでいる人も、パーソナリティ障害の実態を学んで、病識を持ち、背景にある認知の歪みを解消していくことで、しだいに症状が緩和されて、目立たなくなり、最終的にはまった平穏な社会生活、家庭生活がおくれるまでに改善することは十分に可能なことです。

パーソナリティ障害とは認知の歪みの集まり

認知行動療法の観点から見れば、あらゆるパーソナリティ障害は、認知の歪みの集まりであると表現することができると思います。境界性パーソナリティ障害の人の場合、周囲の人をすぐに敵味方に二分して考えがちで、味方とみなしていた人も、ちょっとのトラブルがあると敵に分類されるようなところがあります。これが人間関係を困難にして、社会生活でも行き詰る大きな要因になります。ところが、こうした二分思考は、認知の歪みなので、もし、本人が、自分の境界性パーソナリティ障害の傾向をしっかりと客観視して、病識を持ち、自分の認知の歪みを改める努力を始めるならば、少しずつ、周囲の人間とのかかわり方にも変化がみられるようになり、穏やかな人間関係が構築できるようになっていくこともしばしばみられる現象です。また回避性パーソナリティ障害の人も、もし、本人が病識を持ち、自分の回避性の要素を少しずつでも改めようと、新しい行動様式に取り組み始めることで、少しずつ、回避性の傾向が弱まり、社会的な活動ができるようになっていく事例もあるのです。なぜ自分が他者からの回避を選択していたのか。その背後にある認知の歪みを直視し、それを軌道修正していく心がけを持つことで、人は変わり始めるということです。

パーソナリティ障害からパーソナリティスタイルへの変換

あるいは自己愛性パーソナリティ障害の人が、自分を客観視できるようになり、病識を持ち、自己愛性に偏る部分を修正する努力を重ねることができれば、改善するのです。他者の感情を想像する訓練、他者の感情に配慮した行動のパターン認識、自分本位の思考と行動にならないように、配慮する訓練を重ねることは、おおいに有効です。そうやって、境界性パーソナリティ障害の人でも、回避性パーソナリティ障害の人でも、自己愛性パーソナリティ障害の人でも、自分の中の偏った認知の歪みをとりのぞいていく、地道な作業の結果、社会生活をおくることを邪魔していた、言動の異常性がしだいになくなっていくようになります。そうなるには、もちろん一定の時間も必要ですし、何よりも本人の地道な努力の継続が不可欠です。しかし、それができれば、あらゆるパーソナリティ障害は、障害ではなくなり、パーソナリティスタイルつまり個性へと変わりえるのです。このような本質的な努力をせずに、病気だからと精神科の薬を飲んでいては、治るものものも治りません。薬では、認知の歪みは解消されません。人の思考を変えるような薬は存在しないのです。自分の考え方を変えていけるのは自分自身であり、そのための第一歩は自己を客観視することなのです。

愛着障害は認知の歪みを生み出す土台

パーソナリティ障害の多くは、愛着障害を抱えているといわれています。幼少時から思春期にかけての保護者との関係性の中で、過保護、ネグレクト、虐待といった愛着を破壊するような育てられ方をしたことで、まず愛着障害が根底にあって、そこからパーソナリティ障害が発生してくるという考え方です。愛着障害とは、わたしは愛されていない、わたしは幸せになってはいけない、わたしは、価値がない存在だ、といった認知の歪みを必ずともなっていますので、このような人生の根幹にかかわるような根源的な認知の歪みがすべての源となって、パーソナリティ障害特融のそれぞれの認知の歪みが派生的に生じて来るとう見方もできると思います。また、愛着障害は、ふつうの家庭でも起こりうるものであり、明確なネグレクトや束縛や虐待がわかりにくいような親子関係であっても、親の子へのかかわり方次第では、愛着障害は発生するのだということもわかってきています。その意味で、子供を適切に育てることは愛着障害を予防し、さらにはパーソナリティ障害を発症させないための、いちばん大切な根幹の部分であるといえるでしょう。

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