パーソナリティ障害は「うつ病」になりやすい

パーソナリティ障害(人格障害)の傾向があると社会生活にストレスを感じ、それが原因でうつ状態になることがしばしばあります。この場合に役立つのが、認知行動療法です。そもそも、海外では、認知行動療法は、うつ病のほかパーソナリティ障害の治療などにも活用されてきました。パーソナリティ障害のある人は、うつ病になることが多いのです。

目次

パーソナリティ障害の人は認知の歪みを抱えている

その原因の一つに、パーソナリティ障害の多くの型でみられる認知の歪みがあります。その中でも「二分思考」はよくみられるものです。二分思考とはなんでも白か黒かで考えてしまう思考のクセです。特に境界型パーソナリティ障害ではしばしばこれがみられます。二分思考をすると、自分の周囲にいる人を敵か味方に分けて考えるようになっていきます。さらには、一度、味方であると思った相手でも、何か行き違いがあると一瞬で敵に変わったりと、人物への評価がコロコロ変わります。そのたびに態度が激変するので、周囲の人間は疲れることになります。

二分思考で自分を追い詰め敵を増やすパーソナリティ障害

こうしたストレスをもっとも受け取るのは本人なので、境界型パーソナリティ障害の傾向がある人は、しばしば、うつ病になるのです。こうした思考の歪みは薬物治療では治りません。抗うつ剤をいくら飲んでも、気分の落ち込みは一時改善しますが、根本にある思考の歪みがあるので、また症状はぶりかえすことになります。思考の歪みを改善しなければ、根本改善しないのです。二分思考を少しずつ改めて、物事のグレーゾーンを理解し、何でも二分できるものではないことを学び、物事には必ずプラスの面とマイナスの面が両方あるという見方を事例を通じて学んでいくのが認知行動療法です。

未熟な自我の認知の歪みを認知行動療法で育てなおす

訓練次第で、思考の歪みは次第に解消されていきますので、その結果、ストレスが減ってきて、うつ状態も再発しにくくなっていくということです。パーソナリティ障害の本質は、未熟な自我です。自我が未熟なまま成長しているのです。これを意図的な働きかけで、育てて成熟に導くことが認知行動療法の目的の一つです。思考の歪みをとるノウハウは認知行動療法にだけあるのではなく、ACTや、マインドフルネス認知療法、医療催眠などの心理療法にもあります。自己愛性パーソナリティ障害も強迫性パーソナリティ障害も、それぞれに特有の認知の歪みを抱えています。それに気づき、思考の習慣を改めることで症状が緩和され、うつ状態も治るのです。

あわせて読みたい関連記事: