パワハラ上司とパーソナリティ障害

パワーハラスメントは、パワハラと略称され、人権侵害であるとの認識がようやく広まりつつありますが、この十年で報告件数が八倍に増加するなど社会問題化しています。パワハラは、上司から部下へのものだけではありません。同僚からのものや部下から上司へのパワハラもあります。例えば新任の若い上司に対して部下が結束していじめる場合もあります。いずれも経験や情報や知識やさまざまな面で優位に立つものからのいじめです。

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パワハラは発見が難しく改善されにくい

パワハラは、発見するのがむずかしい部分があります。それは部下は上司になかなか相談できない傾向はいまだありますし、企業の風土がよくないこともあるからです。予防するためには、管理監督者の努力で職場の風土改善をすることです。上司は、自分の影響下にある部下に対して見ているに過ぎません。企業人にとっては最大の環境は上司です。上司がどんな人物か、どんな理念で行動しているかがすべてです。部下が報告、連絡、相談がうまくできないのは、多くは上司から部下への報告、連絡、相談ができていないことが原因です。本来は双方においておこなわれなければならないのがコミュニケーションというものです。こうしたパワハラの原因として、パワハラをする人物が、自己愛性パーソナリティ障害や妄想性パーソナリティ障害を抱えているケースが多いこともわかってきています。自己愛性パーソナリティ障害の傾向がある人は、自分よりも立場の弱い人間に対して無慈悲になります。そして、自分の価値観や考えを押し付け、相手を支配しようとする行動様式をとりがちなのです。その結果として、パワーハラスメントと判定されるような言動を他者にむけてしかけるのです。

年下の部下への接し方に上司の人間性や品性があらわれている

年上の部下は、会社では目下でも、一歩外に出れば逆転した立場となります。そういう人に敬意と尊重がきちんとできない人間は人の上などに立てません。そういったことから教育、研修していかないと、パワハラでうつになり、自殺する事件がなくなることはないのです。ブラック企業とされる会社では、パワハラが日常茶飯事になっています。ブラック企業とパワハラは切っても切れない関係にあり、パワハラをなくすことを政府レベルで推進すれば、ブラック企業も撲滅される流れが生まれると考えられています。そうした社会の改善のためにも、パーソナリティ障害についての啓蒙を進めていく必要があります。パワハラ事案を引き起こしている当該人物が、もし、自己愛性パーソナリティ障害の傾向があったり、妄想性パーソナリティ障害の傾向がある場合、産業医などの支援も受けながら、まず、医療機関への受診を進めていく必要があります。パーソナリティ障害の人は、病識がなく、自分には何の問題もないと思い込んでいることが非常に多いのです。そのため、自己を客観視させるような研修や、心理テスト、ロールプレイングなどの研修が重要です。病識を持つことで、はじめて、歪みを解消しようという動機が生まれます。

パワハラは弁護士にすみやかに相談を

自分がパワハラを受けたと感じたら、できるだけ弁護士に相談することをお勧めします。パワハラをしてきた人物よりも地位が上の人に相談して対処を求めることも一つですが、相手がグルになっている場合にはもみ消されることもあります。政治家の秘書がパワハラされた一部始終を小型の録音機に録音していて、その政治家が責任をとって謝罪をしたケースがありましたが、やはり、どのような言葉でパワハラされたのかを録音しておくことが重要です。それが動かぬ証拠になります。そのため携帯できる小型のペン型の録音機などを常に身につけておくことをおすすめします。そして、相手が自己愛性パーソナリティ障害や妄想性パーソナリティ障害の可能性を常に考えて対処していくことも大切です。また、このほかには、反社会性パーソナリティ障害を持つケースもあります。こちらは犯罪的行為も平然と行ってしまうほどに物事に罪悪感を持たないパーソナリティ障害であり、このタイプとかかわると、もめごとになり苦労することになります。この場合もこちらにその知識さえあれば、うまく身を護ることもできるのです。パワハラ事案でいちばんよく目にするのは、自己愛性パーソナリティ障害を持つ上司が、部下をいじめてしまうケースです。

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