境界型(境界性)パーソナリティ障害のさまざまな症状の根源は人格の形成がアンバランスで幼児的素因が成長後も残っているという人格の未熟さにあり、改善する道はこの未熟さを解消することです。人格障害のある人の最大の特徴は、認知、感情、対人、衝動性の中で二つ以上に著しい偏りがあることです。特に、白か黒か、善か無か、敵か味方か、という思考が強く、これを全か無かの思考、二分思考などと呼んでいます。
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二分思考の背景には幼児期の人格形成の不備がある
これは乳幼児期の子供にみられる「部分対象関係」つまり部分部分での満足、不満足で結びつく関係が成長したのちも残存しているためです。これが対人関係で大きく影響するので何でも敵か味方かで判断し、夫婦、親子、兄弟姉妹、社会とのかかわりで苦労することになります。医師やカウンセラーとかかわるときにもこれが悪い方に作用します。真摯にアドバイスされるほど敵とみなし、何でも受け入れると味方とみなします。例えば、傾聴法で、何でも受容している間は、この先生は味方だと判断するのです。ところが、コーチングやアドバイスの方向にカウンセリングが向かうと、自己否定されたという感情にすぐにとらわれてしまいます。これは自己価値が低い状態にあるためです。意に反することを言われたと受け止める傾向が強いです。
自己価値が低く、すぐに自分が傷つくのに、一方で他者を平気で罵倒
一般的に人格のバランスの取れた人は、誰かからアドバイスを受けると、まずは「ああ、そうなのですか、そうなのですね、じゃ、そうしてみます」というように、いったん受け止めようとする心の余裕を持っています。これは自己価値がある程度、高いからです。ところがこの間合いが全然ないのが、自己価値が低いまま育った人格障害の特徴であり、意に反することを何か言われると、即座に反攻開始となります。多くは、「自分を否定された」「自分のことを責められた」
「素直になれと批判された」「患者の気持ちをわかろうとしない」やがては「カウンセラーとしてどうなんだ」「それでも医者か」みたいな話に持っていこうとします。そして、最後は、「こんな病院に繰るんじゃなかった」「こんな医者にかかるんじゃなかった」「こんなカウンセラーは最低だ」ということにして、そこから逃げていくのです。
すべてを他者のせいにし自分を反省しないパーソナリティ障害
「他責傾向」(人のせいにする)が強いために、自分を顧みることができません。このような境界性パーソナリティ障害の傾向がある人は、実際には相当、社会にありふれているということを知っておいたほうがよいです。何でも部下のせいにする上司、何でも上司のせいにする部下、あるいは、何でも配偶者のせいにする人物、人のせいにするのがとても上手な人物、こういった人はもしかすると境界性パーソナリティ障害の傾向がある可能性があります。自己愛性パーソナリティ障害の場合もこのような思考パターンが見られます。