境界性パーソナリティ障害の人の特徴のひとつに、他者批判があります。他者を批判することが巧みで、相手の落ち度をすかさず指摘しては糾弾します。たとえば自分が物事を間違っていたことを誰かが指摘してくれて、それで過ちに気が付くような場合、ふつうの人は、間違いを教えてくれてありがとうと素直に感謝するものです。ところが、境界性パーソナリティ障害の人はこうはなりません。間違いを指摘されて不愉快な思いをしたという自己の感情の部分にのみ激しくこだわります。そして、間違いを指摘されたことで自分が被害を受けたかのように言うのです。間違いを指摘してくれた親切な隣人は、その糾弾にさらされた結果、「余計なことを言ってすみませんでした」と逆に謝罪させられるはめに陥ります。間違いを指摘してもらえて向上できたというように前向きに考えることよりも、自分のミスを指摘されて、不愉快だ、悔しい、腹が立つという感情に支配されて思考停止してしまうのが、境界性パーソナリティ障害の人の大きな特徴です。これは幼児性であり、幼児期に見られる人間の特性ですが、成長してからもその幼児性がそのまま残存しているのが、境界性パーソナリティ障害なのです。
批判されると逃げて相手の情けを引き出す
誰かに批判をされることは生きていればありえることです。ふつうの人は、こうした他者からの批判があれば、まずはそれを真摯に受け止めて、自己の改善の糧にできないものか検討します。そして、批判が間違ったものであるなら、それを無視しますが、妥当なものであれば、それを受け入れて自分を向上させようとするものです。ところが、境界性パーソナリティ障害の人では、そのようになりません。批判されると、突如、逃げ出すのです。何かの会にいたら、その会を退会して逃げようとしたり、習い事をやめようとしたりなど、遁走を試みます。その場合もだまって去るようなことはせず、自分が去るということを大々的にアピールします。すると何人かの周囲の人が引き留めにかかってくれるので、その引き留めを受け入れる形で正当な立場を確保しつつ、また戻ってくるのです。このような行動様式の背景には愛着障害があります。愛情不足ゆえに、常に周囲の人の愛を求めているのです。しばしば恋愛依存症になりやすいのが境界性パーソナリティ障害の人ですが、それはこの愛着障害が背景にあるからなのです。自分に甘くて、他人には厳しいのが境界性パーソナリティ障害の最大の特徴であるといえるでしょう。