境界性パーソナリティ障害の人は、二分思考が根強くあります。いくら二分思考の問題点を教えても、そのときはわかったような反応をしても、しばらくするとまた元の思考様式に戻ります。そして、自分の意図に反する言動をした人を敵視して、激しく憎むことを繰り返します。ある主婦の場合は、夫の実家に泊まりにいったことをきっかけにして、二分思考が再発しました。それまではカウンセリングなどにより病状を自覚し、二分思考からは離れており、カウンセラーも安心していた矢先でした。その女性は夫の実家で夫と義母が仲良く話している様子を見て激しい嫉妬心がわいてきたのです。夫と義母の会話内容について夫に問いただし、夫が話をごまかそうとすると、今度は夫への憎悪が膨らんでいきました。それまでは夫に感謝し、義母に感謝し、結婚したことに感謝していたにもかかわらず、この事件をきっかけに、夫と義母を憎むようになり、敵視しだしたのです。
境界性パーソナリティ障害の持つ二分思考
このように境界性パーソナリティ障害の人は、ほんのささいなことで味方が敵に変わります。二分思考が強いので、わずかでもマイナスを見つけると、その存在そのものを否定するようになるのです。このような境界性パーソナリティ障害の二分思考から引き起こされるさまざまな対人関係でのトラブルは、すべて境界性パーソナリティ障害の患者の思考のゆがみから起きていて、周囲には何の落ち度もないケースが多いです。激しい思い込みと二分思考の存在を指摘して自覚させ、その思考様式を改めさせるように周囲がサポートする必要がありますが、この状態の境界性パーソナリティ障害の患者は、アドバイスにも耳を傾けず、カウンセラーや援助者をも敵視し始めてしまいます。何度もこの種の対人トラブルを重ねるうちに、周囲に味方がいなくなってしまう結果、孤独になり、いっそう二分思考を増大させ、生きる希望も失い、自殺企図を抱いたり、リストカットなどで周囲の気をひこうとします。