ジキルとハイドという物語は、人格がまったく違う2つの側面をもつ、人に対しての比喩として、しばしば用いられます。境界型パーソナリティ障害においても、これにきわめて良く似た現象がみられます。まるで、ジキルとハイドのように言動がころころと変わるのです。昨日までは味方であったものが、突然、敵になります。診察室に入ってきた患者さんが、ある人のことをほめてよい人だと評価し、次の週にふたたびやってきた患者さんが、同一人物のことを今度は、仇敵のように悪くいう、というのは日常茶飯事です。境界性パーソナリティ障害の人は、自分の主張をそのまま肯定して認めてくれる人は味方であり、自分に意見したり、自分の主張や要求をきいてくれない人は敵対者であると決め付ける傾向があります。
二分性と両価性の思考様式
これは二分思考という未熟な思考様式が原因です。この思考法のため、ものごとは全か、無か、の二つに一つしかなく、極端なのです。グレーゾーンがないということです。ですから、ジキルとハイドのような形で味方から仇敵へと変貌したりして、周囲をふりまわしていくのです。幼児期の育てられ方において、過保護すぎたり束縛がひどかったり、虐待されたりという「見捨てられ体験」「自己否定」の意識が強く植えつけられると、このような二分思考になりやすく、境界性人格障害になっていくのです。この傾向は、自己愛性パーソナリティ障害の人にもしばしばみられます。下記の本はその見分け方、特徴などがわかりやすく、対処法も明解です。
自己愛性パーソナリティ障害のことがよくわかる本 (健康ライブラリー イラスト版)