妄想性パーソナリティと自己愛性パーソナリティ

妄想性パーソナリティ障害とは、他者への猜疑心が異常に強く、被害妄想、猜疑心、疑心暗鬼になり、周囲の人々を極端に疑い、妄想的思考をどんどん膨らませて、それに基づく言動を繰り返すというもので、人間関係を破綻させ、周囲から孤立する結果を招くパーソナリティの歪みです。

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社会的に成功しやすい自己愛性パーソナリティ障害

妄想性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害が併存している人は、非常に難しい人物となります。自己愛性パーソナリティ障害の人は強い自己顕示欲と万能感を背景に、異常なまでの努力で自己の能力を磨いて社会的成功を重ねていくことも多いです。また、これに妄想性パーソナリティ障害を兼ねているケースでは、持ち前の猜疑心を良い意味で最大限に生かして、社会の荒波をのりこえていくことも多いのです。起業して会社を興し、社長として腕をふるい、会社を大きくして成功者になる場合もしばしばあります。ワンマン社長で一代で会社を大きくする人物などにこのようなケースが見られます。妄想性パーソナリティを持つ場合、基本的に他人を信じていません。そのため、だまされるよりはだますという選択を繰り返しますので、ビジネスでもスピーディに成功者に成り上がります。

妄想性と自己愛性の組み合わせ

若くして会社を大きくしたITビジネス長者などに、このような妄想性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害の併存のケースが多く見られるようです。しばしばテレビに登場する良く知られた人物の中にも、その言動の中身から、妄想性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害の合併タイプであることが推定される例が散見されます。最近では、彼らはYouTubeでさまざまな発言を公開しているので、その言動を観察すれば、なかには極度の妄想性パーソナリティと自己愛性パーソナリティの兆候を示している人物も多いです。というよりも、自己愛性パーソナリティであるからこそ、自分の主張を堂々と、動画公開することに何の躊躇もないということになります。もちろん動画配信者のすべてが自己愛性パーソナリティということではありません。しかしながら、特定の芸能人の悪口や噂の憶測話などをなんのためらいもなく、動画公開しているようなケースでは、明らかに自己愛性パーソナリティ障害と妄想性パーソナリティ障害の併存パターンであると思われる人物が見られます。最近も刑事事件となった事例もありました。

パーソナリティ障害は自覚することで克服できる

社会的に成功して地位の高い自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分の性格の歪み、短所を自覚する機会が少ない傾向にあります。自分が社長で周囲が部下ばかりとなると、お山の大将になりますので、歪んだ性格のまま社会活動をしていきます。能力が高いので社会でそれなりの成果を出し、影響力を発揮します。しかし、結婚生活や家庭生活などは、そのパーソナリティの歪みのために、多くの場合で、円満にはなりません。離婚したり、親子関係が破綻したり、親族間でもめたりすることになります。自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分が絶対的に正しく、相手が間違っているという固定観念を手放すことができないので、対人関係を長期的に維持することが下手なのです。ビジネスパートナーのようにお金を目的とする利害関係であれば、その性格の歪みを抱えたまま、関係が一定期間維持されることもありますが、夫婦、親子、家族となるとそうもいきません。このような場合は、カウンセリング、認知行動療法などの心理療法によって、パーソナリティ障害の症状の緩和を目指す必要があります。他人の心情を推しはかる認知能力や、二分思考(物事を白か黒かで見る認知の歪み)、悲観的予言、過度の一般化などのさまざまな認知の歪みをカウンセリングと自己の振り返りのワークによって、ひとつひとつ解除していく必要があります。その意味でもパーソナリティ障害の治療に詳しい心理カウンセラーがもっと必要です。社会において、誰もが気軽に心理カウンセリングを受けられるような仕組みが整うことが必要です。

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