境界性パーソナリティ障害は突然に発症する

それまでふつうに暮らしていた人が、ある出来事をきっかけとして急激に情緒不安定となり、リストカットやOD,自傷行為を繰り返すというのが、境界性パーソナリティ障害ではしばしばみられる発症のパターンです。このような発症のメカニズムについては、現在では以下のように解釈されています。この人格障害を発症する人の場合、幼児期に虐待されたり、無視されたりといった基礎になるトラウマがあります。母親が自分を見捨てて出て行く離別体験。これは離婚や別居などの家庭環境でおこります。父親が出て行く場合でもおこりえます。それから、弟や妹が誕生したことで親が下の子どもにかかりきりになり、見捨てられたと同様の精神的打撃を受ける場合。

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乳幼児や幼児を施設に預けるリスク

さらには母親が仕事人間で子どもにかまうことなく、ベビーシッターや保育園に幼児期に長時間預けられ、母性的愛情を十分に母親から受けられない場合や、母親自身がうつ病や統合失調症などの精神疾患に罹患しており、子どもを保護する精神的余裕がなかった場合など。このようなさまざまな事情で、親に見捨てられた状態を体験することで、最初に精神に大きなトラウマができると考えられています。これを愛着障害と呼ぶこともあります。親との愛着形成がうまくできなかったという意味です。この愛着障害を背景にしたトラウマが、心の底にあるまま、なんとか無事に成長をしますが、それが思春期以降のある時期、例えば、恋愛やいじめ、両親の離婚などの衝撃的な事件をきっかけに、ふたたび傷がえぐられることで、境界性パーソナリティ障害が発症していくという見方です。

もちろん、明確なきっかけがないまま、じょじょに発症し、進んでいくケースもありますが、それでもたいていは、人間関係でのなんらかの見捨てられ体験を多かれ少なかれ、きっかけとして本格化していくのです。この二度目の衝撃が発症の原因になるとの考え方は多くの専門家の一致する見解になりつつあります。そして、些細な言葉や否定的な言葉や拒絶によって見捨てられ不安が増大して、いっそう症状が悪化していくのです。そして、境界性人格障害を改善させるためには、この見捨てられ不安を治癒させる認知の歪みの解除が必要になります。


人格障害の時代 (平凡社新書)

 

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