HSPとは、ユング派の心理療法家の著書の中で初めて使用された概念です。著者はエレイン・N・アーロン。しかしHSPが定義する「敏感過ぎる」という症状は、医学における「熱がある」という症状と同じようにあまりにも広い範囲を指す症状のために、長い間、精神医学者や多くの心理学者には注目されてこなかったようです。
目次
発達障害から生じるHSPの過敏性
感覚過敏や神経過敏を引き起こすもっとも多い原因が発達障害と愛着障害だと考えられています。発達障害は自閉スペクトラム症とも呼ばれ、緊張が亢進しているために、音や声に過敏に反応したり、特定の音に異常に過敏であるケースがあります。これらは、幼いころから症状として早い段階で気づくことが多いので、発達障害(自閉スペクトラム症)の発見の手助けともなります。自閉症スペクトラム症は、対人関係が苦手でコミュニケーションが適切にできない傾向があります。他者への共感が苦手で、特定の関心事にとらわれるという特徴があります。そして、感覚過敏やその反対の感覚鈍麻などの症状がみられます。感覚が過敏であるために、人との接触を避けてしまい、友達ができなかったり、話を聞きとる能力が低いために、相手の話についていけないなどの問題を抱えます。想定外のことがあるとパニックになりやすいことも特徴です。
回避型、不安型の愛着障害とHSP
幼い頃に虐待を受けたり、親から引き離されるような体験をしていると、愛着障害になることがありますが、このような愛着障害を持っていることで、HSPの傾向がみられるようになるものも多いです。親との関係が安定したものであり、困った時に親に甘えられる場合は、愛着障害である可能性は低いですが、そうでない場合は、親との関係がぎこちないものであったり、素直に甘えられないなどの兆候があります。親に過度に気を使いすぎるのも愛着障害の現れです。愛着障害には、不安型と回避型があります。不安型は愛着不安を抱えて、過剰なまでに愛着対象にこだわり、愛情や関心を得ようと大騒ぎします。しがみつくかと思えば攻撃したり、困らせたりします。見捨てられ不安が強いことをこのような形で表現するのです。相手に認められないと不安になり、承認や安心を求めて相手を困らせるのです。回避型はこの反対に、人に弱みを見せたり相談したりせず、心の世界が孤独です。親密な関心や心のつながりをできるだけ避けるのが回避型の愛着障害の特徴です。
HSPを克服する肯定的でバランスの良い認知
HSPを克服するためにはその背景にある発達障害や愛着障害をできるだけ緩和することが大切であるといえます。過敏性を克服するためには、肯定的でバランス良い認知を育てることが大切なのです。精神科医の岡田尊司氏の著書「過敏で傷憑きやすい人たち」の中には、肯定的認知を育てることの大切さが力説されています。
過敏で傷つきやすい人たち (幻冬舎新書)
本書によれば肯定的な認知を高めるには、幸福な人のふるまい方を真似するようにすればよいとの研究結果があるのです。親密な関係を大切にしたり、楽天的思考を練習したり、やりがいのある活動に取り組ませると、さまざまなメンタルの不調は緩和されることがわかったのです。肯定的な感情を増やし、肯定的な認知を主にした内面世界を育てることでHSPの症状も克服できる可能性があるということです。特に「希望のエクササイズ」として、自分の理想の人生を書き出し、毎日15分それを考えるようにすると、幸福度が高まるということです。人生の目標つまり志を立てることがいかに大切なことかがわかるということです。